911 Carrera IROC RSR 3.0  1974 IROC Daytona


IROC(International Race Of Champions)F1、NASCAR、SCCA、USAC(インディカー)で活躍するトップドライバーから選ばれた12人が、ストックカーで速さを競うオールスター戦です。車両のイコール・コンディションを保つため、全ての競技車両を一人の整備士が整備するほど徹底的に管理された車両は、スタートの直前に各ドライバーに割り当てられていました。それゆえ IROC では、ドライバー同士の腕とプライドをかけた激しいバトルが見ものです。記念すべき第一回目のIROCは、1973年にカリフォルニア州リバーサイドで3試合の予選が行われ、この予選で高得点を得た上位6名による決勝が年をまたいだ1974年にデイトナビーチで行われました。米国でポルシェのワークス活動を担ってきたペンスキー・レーシングのドライバーで、ポルシェ使いとしても知られる Mark Donohue が記念すべぎ初代IROCチャンピオンに輝いています。

1973年、IROC は、シリーズ用のレースカーに、当時リリースされたばかりの新しいカレラRSRを採用することを決めました。開催までの短期間に IROC 用の競技専用車両15台を用意できるメーカーがポルシェの他にはありませんでした。 IROC専用マシンの製作依頼を受けたポルシェは、911RSRをベースに搭載されるエンジンを231馬力の2.8リッターから315馬力の3リッターに強化し、空力的なスタビリティにも改良を施し、オイルクーラーとブレーキ冷却用ダクトが一体となった特徴あるフロント・バンパーなどが新たにデザインされました。

この新しいボディは翌74年の カレラRS 3.0にもそのまま採用されていますが、RS 3.0 のホイールはフロント8インチ、リヤ9インチが標準とされており、極太の9インチと11インチが採用されたIROC用 RSRとは外観の迫力が全く異なります。IROC RSR は予備も含めた15台が製造され、ドイツ出荷時に装備されていたダックテールも予選までに専用の大型スポイラーに交換されました。

ポルシェ911カレラRSR IROCは、リバーサイドのレースが終わった時点で15台中7台がオークションで一般ユーザーに売却され、残りはポルシェによるフルオーバーホールを経てデイトナでの決勝に使われました。決勝終了後は残りの8台も全て一般に売却され、今やマニア垂涎の希少なコレクターアイテムとなっています。

この作品はタミヤ(tamiya) 1/24 の 934RSRを改造したものです。前後バンパーやフェンダーに手を加え、自作のデカールで74年の決勝戦に使われた6台のうち、優勝した #1 Mark Donohue の車両と、同じくポルシェと縁のある #4 George Follmer の車両に仕上げてみました。当時始まったばかりだったカラーの TV中継放送での見映えを考慮して、全車異なる派手なカラーで塗装された IROC RSR が激しくバトルする様子は、まるで現在のカップ・カーによるレースを見るようです。翌年からは新たにスポンサーとなったシボレーの要請により、IROC はカマロをベースとしたレースカーで戦われることとなったため、IROC でポルシェが使われたのは第1回目のみとなってしまいました。

優勝の翌年、F1の練習中の事故によりこの世を去った Mark Donohue にとって、IROC ポルシェでの優勝が最後の表彰台となってしまったのは本当に残念です。